金山裕子さんとの出会いは、彼女が京都清華大学芸術学部日本画専攻在学の時でした。制作中の作品の感想を求められたのが最初だったと思います。なにげない日常の生活の中で、縫い物中のミシンのある風景画でしたが、彼女のお人柄を表し、温かい空気を醸し出していました。その作品は「夜明け前」と題し、第四十八回日春展(平成25年)に見事に入選となりました。学部を卒業後、大学院に進み、大学院修了制作に自坊の月蔵寺本堂に献納する格天井画を課題として制作を始められました。
折々に大学院の教室をのぞき、制作中の作品を観て感想を述べたり、私の作家としての経験を話したりしたことを思い出します。
金山さんの一生懸命作品に向かっている姿勢が、真面目で絵を描くことが好きな方だという印象を強く受けました。
大学院修了後も次々と描き加えていかれ、私は平成30年の新日春展堺展開催の際にお寺をお伺いしました。丹精を凝らした種々な花木のある境内を案内していただき、そして完成間近の天井画を観せていただきました。
ご自分が愛でた四季折々の花木を円窓図に構成し慈愛の心で制作された絵は、寺宝の釈迦涅槃図と共に幾久しく大事に伝えられ、守っていかれることと思います。
日展理事 京都清華大学名誉教授
渡辺 信喜